公開: 2026/03/16 ・ 著者: 与謝秀作
トライアル雇用とは?制度の仕組み・条件・お試し転職との違いを徹底解説
トライアル雇用の仕組み・対象条件・助成金額を厚生労働省の最新情報をもとに解説。試用期間やお試し転職との違い、メリット・デメリット、申請手順までわかりやすくまとめました。

目次
「トライアル雇用って聞いたことはあるけど、具体的にどんな制度?」「お試し転職と何が違うの?」——そんな疑問を持つ方は少なくありません。トライアル雇用は厚生労働省とハローワークが主導する公的制度で、就職が困難な求職者と企業のマッチングを支援する仕組みです。
本記事では、トライアル雇用の仕組みや対象条件、助成金の金額から、民間サービスである「お試し転職」との違いまで徹底的に解説します。転職活動中の方はもちろん、採用を検討している企業担当者にも役立つ内容です。
トライアル雇用とは?制度の基本をわかりやすく解説
トライアル雇用とは、職業経験の不足や長期離職などの理由で就職が困難な求職者を、企業が原則3か月間の有期雇用契約で「試しに」雇い入れる制度です。ハローワーク等の紹介を通じて実施され、トライアル期間終了後に企業・求職者双方の合意があれば、無期雇用(本採用)へ移行します。
厚生労働省のデータによると、トライアル雇用終了者のおよそ8割が常用雇用へと移行しており、制度として高い実績を残しています。また、一定の条件を満たした企業には国から助成金が支給されるため、採用コストの削減にもつながります。
トライアル雇用の対象者・条件
トライアル雇用に応募できる求職者には、以下の条件があります。すべてを同時に満たす必要はなく、いずれかに該当すれば対象となります。
求職者側の主な条件
まず前提として、ハローワーク等に求職申込をしていること、週30時間以上の無期雇用を希望していること、トライアル雇用制度を理解し希望していることが必要です。そのうえで、次のいずれかに該当する方が対象になります。
紹介日の前日から過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している方、紹介日の前日時点で離職期間が1年を超えている方、妊娠・出産・育児を理由に離職し安定した職業に就いていない期間が1年を超えている方、60歳未満でハローワークの個別支援を受けている方、そして生活保護受給者・母子家庭の母・父子家庭の父・日雇労働者・ホームレスなど特別な配慮が必要な方です。
企業(事業主)側の条件
企業側にもいくつかの条件が定められています。ハローワーク等にトライアル雇用求人を提出していること、派遣求人ではないこと、法令違反がないことが基本要件です。また、雇用前に無期雇用を前提とした約束がないこと(あくまで「試行」であること)、対象者が事業主の3親等以内の親族でないことも求められます。
トライアル雇用助成金の金額と申請の流れ
一般トライアルコースの助成金額
一般トライアルコースでは、対象労働者1人あたり月額最大4万円が最長3か月間支給されます。つまり1人あたり最大12万円です。対象者が母子家庭の母または父子家庭の父の場合は月額最大5万円(最大15万円)に増額されます。
なお、障害者トライアルコースの場合は月額最大4万円で、精神障害者については最初の3か月間が月額最大8万円、その後3か月間が月額最大4万円と手厚い設計になっています。
申請の流れ
トライアル雇用の手続きは5つのステップで進みます。まずハローワーク等にトライアル雇用求人を提出し、紹介を受けた求職者と面接を実施します。次に原則3か月間のトライアル雇用を開始し、開始日から2週間以内に「トライアル雇用実施計画書」をハローワークに提出します。トライアル期間終了後に本採用の可否を判断し、終了日の翌日から2か月以内に「支給申請書」を提出すれば、助成金を受給できます。
トライアル雇用と試用期間の違い
トライアル雇用と混同されやすいのが「試用期間」です。どちらも本採用前に適性を見極める仕組みですが、制度の性質は大きく異なります。
試用期間は企業が独自に設定するもので、本採用を前提とした雇用契約の一部です。期間は1〜6か月程度が一般的で、期間中に解雇するには「客観的に合理的な理由」が必要とされます。一方、トライアル雇用はハローワーク主導の公的制度であり、期間は原則3か月と決められています。本採用の義務はなく、期間満了後に雇用を継続しない場合も解雇のような高いハードルは求められません。さらに、トライアル雇用には助成金が支給されますが、試用期間にはそのような制度はありません。
トライアル雇用と「お試し転職」の違い
近年注目を集めている「お試し転職」とも、トライアル雇用は本質的に異なる仕組みです。この違いを理解しておくことは、自分に合った転職手段を選ぶうえで非常に重要です。
運営主体と法的位置づけ
トライアル雇用は厚生労働省・ハローワークが運営する公的制度で、雇用契約を結んだうえで実施されます。賃金が支払われ、労働基準法も適用されます。一方、お試し転職は民間サービスであり、副業や業務委託として職場体験を行うケースが多く、正式な雇用契約を伴わないことが一般的です。
対象者の範囲
トライアル雇用は、就職困難者(長期離職者、ひとり親、障害者など)に対象が限定されています。誰でも自由に利用できる制度ではありません。お試し転職は特定の利用条件がなく、現在就業中の方でも副業感覚で気軽に参加できます。
期間と報酬
トライアル雇用は原則3か月間、フルタイムで勤務し、通常の従業員と同様に賃金が支払われます。お試し転職は1日〜数か月と柔軟で、報酬は案件によってまちまちです。無報酬のケースもあれば、業務委託費が支払われるケースもあります。
現職との両立
トライアル雇用はフルタイムの有期雇用契約のため、基本的に現職を辞めてから参加する必要があります。お試し転職は副業や週末だけの参加も可能で、今の仕事を続けながらリスクを抑えて転職先を探せる点が大きな魅力です。
トライアル雇用のメリット・デメリット
求職者にとってのメリット
未経験の職種であっても応募でき、実際の業務を通じて技術やスキルを習得できる点が最大の魅力です。書類選考がなく面接からスタートするため、職歴に不安がある方でも挑戦しやすい仕組みになっています。3か月間の就業体験を通じて、職場の雰囲気や仕事との相性を確かめてから本採用に進めるため、入社後のミスマッチを大幅に減らせます。
求職者にとってのデメリット
トライアル期間満了後に本採用されない可能性がある点は最大のリスクです。不採用となった場合、3か月という短い職歴が履歴書に残ることになります。また、ごく一部ですが、助成金目的でトライアル雇用を繰り返し、本採用しない企業が存在するという指摘もあります。応募する際は企業の過去の採用実績やクチコミを確認することをおすすめします。
企業にとってのメリット
3か月間の実務を通じて適性を見極められるため、採用のミスマッチを防げます。ハローワーク経由で求職者が紹介されるため、求人広告費がかからず、さらに助成金を受け取れるため採用コスト全体を削減できます。就業規則の変更も不要で、手続きが比較的シンプルな点も魅力です。
企業にとってのデメリット
トライアル期間中も賃金の支払いは必要で、教育・研修のコストもかかります。また、書類提出の期限管理(実施計画書は2週間以内、支給申請書は2か月以内)を怠ると助成金を受給できなくなるリスクがあります。対象者の条件が限定されているため、必ずしも求める人材にマッチするとは限らない点にも注意が必要です。
トライアル雇用の種類一覧
トライアル雇用にはいくつかのコースが用意されており、対象者や助成金額がそれぞれ異なります。
「一般トライアルコース」は、職業経験や技能が不足している求職者を対象としたもっとも一般的なコースで、月額最大4万円(ひとり親は5万円)×最長3か月が支給されます。
「障害者トライアルコース」は、障害者の方を対象としたコースです。精神障害者の場合はトライアル期間を最長12か月まで延長でき、最初の3か月間は月額最大8万円と手厚い支給があります。テレワーク勤務の場合は期間を6か月まで延長可能です。
このほか、週20時間未満の短時間勤務を対象とする「障害者短時間トライアルコース」もあります。自分の状況に合ったコースを選ぶことが、制度を有効活用するポイントです。
トライアル雇用求人の探し方
トライアル雇用求人を探す方法はシンプルです。ハローワークインターネットサービスの求人検索画面で「詳細検索条件」を開き、「トライアル雇用併用求人」にチェックを入れて検索するだけ。フリーワード欄に「トライアル雇用」と入力しても検索できます。
また、ハローワークの窓口で直接相談すれば、自分のスキルや経験に合った求人を紹介してもらえます。トライアル雇用に興味がある方は、まずは最寄りのハローワークに足を運んでみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
トライアル雇用中に辞めることはできる?
はい、可能です。トライアル雇用はあくまで有期雇用契約ですので、本人都合による退職は認められます。ただし、企業の助成金支給額に影響する場合があるため、退職を検討する際は早めに企業に相談しましょう。
トライアル雇用で不採用になったらどうなる?
トライアル期間満了後に本採用に至らなかった場合、雇用契約は終了します。その後は再びハローワークで求職活動を行えますし、別のトライアル雇用求人に応募することも可能です。
お試し転職との併用はできる?
制度上の制約はありませんが、トライアル雇用はフルタイム勤務が前提のため、同時にお試し転職(副業型)を行うのは現実的には難しいケースが多いでしょう。まずはどちらの制度が自分の状況に合っているかを見極めることが大切です。
まとめ:自分に合った「お試し」の方法を選ぼう
トライアル雇用は、ハローワークが主導する公的な試行雇用制度であり、就職困難者が実務経験を積みながら本採用を目指せる心強い仕組みです。企業にとっても助成金を活用しながらミスマッチを防げるメリットがあります。
一方で、すでに就業中の方や特定の条件に該当しない方には、副業・業務委託型の「お試し転職」のほうが合っているかもしれません。現職を辞めずに複数の企業を体験できるお試し転職は、転職リスクを最小限に抑えたい方にとって有力な選択肢です。
大切なのは、自分の状況やキャリア目標に合った方法を選ぶこと。ハローワークの制度と民間サービスの違いを正しく理解したうえで、納得のいく転職活動を進めていきましょう。


